研究会の目的

この研究会は、1997年に「P450若手の勉強会」としてスタートしました。その後、「UDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)研究会」と合併し、さらに硫酸基転移酵素(SULT)研究者を含めた勉強会となり、P450とUGTとSULTの研究者の交流の場としての役割を果してきました(「研究会の歴史」をご覧下さい)。そして、2013年、研究会をさらに発展させるため、「内外環境応答・代謝酵素研究会」と名称を改め、前述した代謝酵素をはじめトランスポーター、核内受容体関連の研究をも含める形で、再スタートすることになりました。 
 P450研究の発端となったのは大村 恒雄先生と佐藤 了先生の論文“A New Cytochrome in Liver Microsomes” Tsuneo Omura & Ryo Sato, J. Biol. Chem., 237, 1375-1376 (1962) ですが、2012年はこの論文が世に出て50年の節目の年でした。P450が薬物代謝酵素として重要であることは周知のこととなっていますが、P450は多くの内在性脂質の生合成と代謝にも関与しています。また、P450は微生物から高等動植物に至るまで広く生物界に存在し、その多彩な機能により、生物の進化と多様性に深く関わってきました。ひとつのP450を祖先として、膨大な数のP450分子種から成るP450スーパーファミリーを形成してきたわけですが、それぞれの生命体が内外環境の変化に対応するための手段のひとつとして選んだのが、P450の多様化であったと推測されます。その最たるものが植物であり、イネのゲノム中には400種を超えるP450が存在し、きわめて多くの二次代謝産物を作り出します。まさに、P450は「内外環境に応答するための代謝酵素」であり、この研究会の名前の由来になっています。 
 P450が触媒する反応は一原子酸素添加反応であり、多くの場合、基質には水酸基が導入されますが、生じた水酸基にはUGTによるグルクロン酸の転移やSULTによる硫酸基の転移が生じ、抱合体は体内で機能したり、体外に速やかに排泄されたりします。したがって、UGTやSULTはP450と密接に関わる「内外環境応答のための代謝酵素」であり、P450と同様、多数の分子種から成るスーパーファミリーを形成しています。 
 これら代謝酵素の研究における日本人研究者の貢献はきわめて大きく、現在も活発に研究が行われています。しかし、これら代謝酵素の機能が多様なことから、研究者の所属・専門が医・薬・農・理・工の基礎から応用と多岐に渡り、これらの研究者が一堂に会して活発に議論できる場は本研究会をおいて他にはないと思います。また、P450、UGT、SULT以外の代謝酵素、トランスポーター、核内受容体関連の研究者も大歓迎しますし、「内外環境応答」関連の研究はすべて本研究会の対象になります。今後も年一回の勉強会を中心に活動したいと思いますので、奮ってご参加下さい。皆様の入会をお待ちしています。

【沿革】

 1997年 P450 若手の勉強会としてスタート

 2007年 P450・UGTの共同勉強会となる

 2011年 P450・UGT・SULTの共同勉強会となる

 2013年 「内外環境応答・代謝酵素研究会」の新たな名称で発展